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研究業績

1.市場所得概念の研究

 

現在の研究及び研究計画の概要

1.所得課税の課税対象である「所得」概念について研究している。とりわけ、近時ドイツを中心に注目を集めている市場所得説に基づいた所得概念(市場所得)とわが国の所得税法との関連について研究している。

 日本国憲法は84条において租税法律主義を規定している。その具体的内容として課税要件法定主義および課税要件明確主義が認められている。しかしながら、所得課税を規律する所得税法および法人税法には、その課税対象である所得に関する定義規定は存在しない。課税対象は課税要件であり、その課税対象を定めていないということは租税法律主義の要請に反するおそれがあるといえる。そのため所得とは何か、すなわち所得概念に関する法的研究の必要性が生じる。この所得概念に関する研究は所得税法において最も根本的な課題である。

 従来、所得概念に関しては純資産増加説(包括的所得概念)と所得源泉説(制限的所得概念)が中心的役割を果たしてきた。しかし近時ドイツにおいては第三の学説である市場所得説が支持を集めている。この市場所得説において導かれる所得概念(市場所得概念)について、納税者の基本的人権を保障するという観点から、検討を加えていく。

2.そのほか、わが国の税制に関する法的問題を広く考察するとともに、EU統合を迎え変化を遂げているヨーロッパ、とりわけドイツにおける税制改革についても注目している。

3.租税の徴収手続においては、通常の私債権との優先関係が問題となる場合が多い。この点は破産法の改正など、新たな問題が生じてくるであろう。そのような徴収手続における法的問題のひとつとして、徴収手続における納税者の権利保護という観点も重要な意味をもってくる。そこで、徴収手続に

おける納税者の権利保護について、ドイツの徴収手続との比較において日本の徴収制度の問題点についても検討している。

4.相続税は遺産税方式と遺産取得税方式と2つの課税方式が一般的に考えられる。現行制度は、この折衷的な制度となっている。これによって応能負担原則に基づく課税が実現できているのであろうか。例えば、遺産税的要素があることで、税負担を軽減する特別措置の効果が本来軽減を受けるべき相続人以外の相続人にも影響するという結果が生じている。こういった現在の相続税制度が抱える問題について、特に課税方式との関係で相続税を法的視点から検討している。

5.消費税は現在の基幹税としての地位を獲得したといえる。しかし、その制度を見た場合、法律の規定が少なく様々な制度上の問題が生じているように思われる。とりわけ、仕入税額控除について、その性格など大きな問題を抱えていると考えられる。このような、消費税の制度的な問題について、ドイツ売上税、EUの付加価値税を参考に検討している。

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